迷走的もの作り(2)

Sophiee Winkler

2009年07月03日 12:47




どんなもの作りでも、完成したと思っても実は適当だったり、不備があったりすることに気付くことがあります。私の作品はけっこうそういうものが多くて、発売後に冷や汗をかきながら修正するということもよくあります。よくあってはいけないのですが、後になって欲が出てくるということもあるので、これはなくならないと思います。

自分の趣味のためだけにやるのであれば、幾ら時間が掛かってもいいし、いくらプリムを使ってもいいし、操作がややこしくても構いません。しかし、人に依頼されたもの、商品として店頭に並べるものには何かしら妥協している点があります。

まず、期限を守らなくてはいけないし、そこそこのプリム数でなくてはいけない。それから仮想世界特有の問題として、スクリプトが軽くなければいけません。以前自動で色が変わるランプをつくったときに、それ一つで十分Simを落とせるような重たいスクリプトを書いてしまい、人に言われるまで気がつきませんでした。要するに綺麗な爆弾を製造してしまったわけです。

色々悩んだ挙句、リンデンラボのスタッフがフリーで供給している「炎」のアニメーションとスクリプトを流用することで千分の1くらいの軽さにできました。もちろん、色変わりのスムーズさと言う点ではオリジナルに劣るのですが、デメリットが多すぎるので見かけの部分で妥協することにしたのです。このようになんでも自分でつくるのではなくて、先人の名作を流用するというのも必要なことです。今ではこの手法は自分のものとして、いろんなところに使っています。

他の人が作ったものは色んな意味で参考になります。まずそんなものが作れるのかという着想の点ですね。例えばキラキラ光るマイクロプリムを多用したアクセサリーなんて、細かすぎてつくろうと思わないし、余程接近しないとその技量が分からない、なんか自己満足的なものでないかと思って敬遠していたのですが、実際に作ってみるといろんな技が駆使されていて勉強になるのです。

それから他の人の作ったものが参考になるというので見落としがちなのは、人により妥協するポイントが違うということです。自分はプリムの形状で苦労したのに、別の人はサラッとテクスチャーで逃げていることが分かったりします。逆に見えないところはやっぱり手を抜いてあることが分かって妙に安心したりします。

この間作った紙飛行機の機種部分なんか、普通のプリムで作れば面の集まってくる頂点は面に厚みがある以上、ゴテゴテと奇妙な形状になってしまいます。でも実際に使用するときにはそんなところを拡大して見るということはないので、実害はありません。しかし、せっかくデジアカで厚みのないペラペラプリムを教えてもらったのですから、なんとか幾何学的にすっきり仕上げたいと思うかもしれません。でもこれは四角形の頂点をそろえるのとは違い、三角形ではうんと難しくなるのです。

なぜならばペラペラプリムを作るときにはパスカットを他用しているので、プリムの中央が思わぬ場所にあって、位置を決めたり回転させて頂点を合わせようとするときに「絶対音感」ならぬ「絶対空感」のようなものが必要で、そう簡単にはいかないのです。もちろんプリムの取り回しのために幾つかのテクニックは使うわけですが、最後の微調整が難しいので、結局は止めてしまうということもあるでしょう。これは個人の技術との兼ね合いもあるので、超上級者であれば易々とできるのかもしれません。一度みなさんでペラペラプリムを張り合わせてピラミッドでも作ってみると面白いでしょう。私も再度挑戦してみようと思っています。

誰かが既に作ったものを、形を真似てスクリプトをどこかで手に入れて、同じようなものを作ることは可能だし、見かけとして更にいいものにしてしまうこともできます。一方で誰も手掛けたことがなく、できるかどうかもわからないものにチャレンジするのも、なかなか楽しいものです。

新しいものをモノにするには、何かしら新しい手法やスクリプトの組合せを開発しなければならず、それはもうどこかのブログや教科書で教えてくれている領域を超えて進んでいることになります。自分なりの勘や着想が自分を導いて進んでいるとき、そしてパッと視界が開けるとき、SLに内在するものづくりの醍醐味を感じ、真理に抱かれている自分を感じることができます。迷走することそのものが目的なのかもしれません。
ものづくり