2009年02月05日
SLの低迷って何?

N総研が最近出した「仮想世界○○マップ」という本があります。これは仮想世界の未来を描きなおすことでこの分野におけるIT関連情報ビジネスの主導権を握ろうという目論見ですね。「セカンドライフの低迷から真の発展が始まった」なんて書いてあります。
簡単にいうとSLはもう駄目だが、仮想世界はまだまだ行けるんだという趣旨で、マルチバースの大きな可能性に着目するなかで、ちゃっかりと自分たちの3D-IESというマルチメディアを利用した教育システムにも言及しています。でもこれ自体は2000年からあるものらしいのですが、公開されているものではないので一般には知られていないのです。
まあ、マルチバースの時代が来るのは必然なんですが、それを強調するためにSLは駄目だ、もうおしまいだと論じていますね。ところがそんな素晴らしいマルチバースって何なのって素人に説明するために、結局SLではこうやっているっていうSLの基礎からのお話に1章を割いて解説をしています。つまりSLがお母さんなのに、臍の緒のとれていない赤ちゃんを褒めるために母親の悪口を言うという滑稽な図式ですね。親子だから同じ血が流れているのにね。
マルチバースというのはSLを3D-SNSの総合デパートだとしたら、その部分々々を対象として専門店をつくるようなものです。デパートの品揃えは総花的だけど、専門店はブランドに特化した商品・サービスでお客を魅了しようというわけです。RLと同じように色んなサービスを提供する総合デパートやスーパー、専門店、零細小売がそれぞれの顧客を得て棲み分けている状態の世界をマルチバースというのですね。でもここに大きな勘違いが潜んでいるように思います。
確かにSLのサービスや技術という点を見ると、個々にはRLの既存のサービスレベルに対抗できないようなもの、3Dの画像処理とかセッティングの簡便性その他が多くあります。しかし、それらに満足できないで他の専門店サービスに移動してしまう人というのは、主としてビジネス目的でしょう。
一般の個人でSLに不満を感じている人の中にはその本人自身の資質や能力が不足している場合もあるので、専門店に行ったからといってそのメリットを100%享受できるかどうかはかなり怪しいのです。着ていく先もないのにブランド物のドレスを買い込んで電車通勤で使っているOLなんて図にならないでしょうか?
マルチバース化のハードルとしては、一つの世界で獲得した資産やアバター等をそのまま他の世界に移転できるかということがありますね。このお金はデパートでは使えるけど、横にある専門店では使えないなんていうことでは、マルチバースが名前倒れになってしまいます。これが技術的に100%間違いなくできることが不可欠となってきます。RLでも私たちは沢山の種類のクレジットカードやマイレッジポイントやお得スタンプを束にしてお財布に押し込んでいますよね。お金はいいとしても、大きなオブジェクトなんか移転して使うのは大変でしょう。
まあ、この本は全体としては納得のいく部分もあり、私の知らないことも一杯書いてあるので読んで損したというわけではないですが、納得できない分析もあります。特にSLのユーザーアンケートが掲載されていますが、これが07年の9月時点ということで、あまりに古いですね。SLが低迷しているといわれるまで待っていて、やおら昔の資料を持ち出して理屈を後付けしたといわれても仕方ないでしょう。どうして今のユーザーに最新のアンケートとらないのでしょうね?07年に資料を手にしているなら、その時点でSLはやがて低迷するって予測を公にすればよかったのにね。
私も実はSLって駄目ねって思っていた時期があったけど、最近は「低迷」って誰の立場で言っているのか?低迷して何が悪いのかって思うようになっています。先日のこのブログにコメントを寄せてくれた人も言っていましたが、SLは懐が深くて、それなりに時間を掛けて、粘り強くプレイしてみて初めてわかることというのが一杯あります。それに気付かずにSLを去っていく人の中には、ゲーム等の押し着せの受身の楽しみで飼いならされてしまった人達や、根気やイマジネーションの乏しい人達が沢山いて、それらの人はマルチバースの世界になっても同じような行動パターンを踏むことは十分予想されますね。
書いている人達はみんな優秀なんでしょうが、実際にSLを十分にはやっていないという気がします。3D‐SNSで更に飛躍するITの世界、でもそれに必要なのは事業者の提供するプラットフォームだけではなく、イマジネーション豊かな、クリエイティブなユーザーです。SLはそのような人達を新しいクラス(階級)としてフィルタリングしている最中なんですね。フィルターの目が細かいので、こぼれてしまう粒子を拾うというところにビジネスチャンスを見つける。それはそれで市場的には大きいので十分成り立つでしょう。またビジネスユーザーであれば、数は少なくても大きなお金が動きますね。業界の人はみんなそれを狙っているのですね。
でも、お仕着せサービスで生産者や業者のいうままに踊ってくれる、いつまでもお馬鹿なユーザー・消費者というのを前提としてビジネスを考えるのはもう古いですね。もちろんこの本でも「ユーザーと一緒に作る」という文句が随所に見られるのですが、ユーザーの役割が色々我儘をいうだけでなくて、自分で勝手に解決策を見つけてしまうというように変化していくことをサービスを提供する側が受け入れられるのかがポイントでしょう。お蔭で十分な刺激を貰ったように思います。結局広告しちゃったのかしら?ただ、1,800円はちょっと高かったかも。
Posted by Sophiee Winkler at 13:19│Comments(0)
│ビジネス
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