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Sophiee Winkler
Sophiee Winkler
2007年6月生まれ。MagSLの原宿に住んでて、HARAJUKU PLACE というお店をやってます。景観商品とか小物が中心です。最近はスキンとシェイプに凝っています。
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2009年12月17日

はかなきもの(2)

はかなきもの(2)

昨日の記事は反響は大きかったのですが、受け止め方は人様々でしょうね。信用ならないいい加減な話を私が大袈裟に表現しているだけだと思う人から、そんなことは当たり前だというものまで。ということでもう少し丁寧に書いておくことにしましょう。

まず、私は一昨日まではSLにおける所有権というのはRLのそれとは同じではないにしても、かなり近いものとして認識していたのです。つまり、私がSLの中で作ったものは私のもので、私はそれを自由に売ったりタダで配ったり、一部の権利を譲り渡したり、消滅させたり出来ると思っていたのでした。それは別に間違ってはいないけれど、だからといって私が私の作ったり、購入したりしたものの「所有権」を持っているのではないのだということが驚くべき発見だったのです。「そ、そんな~・・・」って感じ。

では何が真実なのか?まず、SLのTOS(サービス規約)を見てみましょう。英語で小さな字でゴチャゴチャ書いてありますが、ポイントだけ抜き出すとこんな具合です。

「リンデンラボは理由の如何、有無を問わず、あらゆるアカウントIDまたはアバター名を削除または変更する権利を有する。」
「ユーザーは作成したコンテンツに関する特定の著作権または知的所有権を保持していても、サービスにアクセスするアカウントは保持せず、リンデンラボがサーバーに保管するいかなるデータも所有しないことに同意する。」
「ユーザーはリンデンラボがいかなるコンテンツも理由の如何、有無を問わず、また通知の有無をとわず、一切の責任なしに削除する権利を有するが義務は有さないことを理解し、それに同意する。」

他にも一杯この手の事が書かれているのですが、これくらいで十分読む気を無くしてしまいますね。難しいのは2番目の規定で、これはある前提が分かっていないと理解できません。

それはユーザーはSLを始める前にすでにRLであるデザインやモノに対して知的所有権を持っていて、それをSLの中で使用して同じものを再現するという場合をも含むことを想定しているのです。

だから、ここでリンデンラボがいいたいのは、あんたはRLではある知的所有権を持っていたとしても、それをSLで再現したからといって、当然にプラットフォームの中のそのデータにアクセスすることはできないし、RLの権利と同じものをSLで持っていると思うなよ、ということなんです。

全体の書き方は、SLのユーザーはSLの中で作ったものに対して知的所有権を持っているけれども、それは非常に限定されていて、如何なる時でも理由なしにその権利は消滅させられてしまう程度であるということです。

でも、所有権の本来の意味はその権利を有する者が、それを排他的に行使できることがポイントですから、このようにリンデンラボに死命を制せられている権利は「所有権」とはお世辞にも呼べない弱い力しか持っていません。せいぜい「使用権」とでもいうべきものでそれも全くリンデンラボに対しては法的な主張力、対抗力を持たないのです。そのようなものを「権利」と呼ぶことができるのでしょうか?

つまり、総合すれば私たちはSLで作ったものに対して「所有権を持っていない」ということが正しい解釈なのです。

次に、TOSとは別に論理的な帰結としてどうなるのかということを考えてみましょう。そもそもSLの中で私がモノを作るということはどういうことなのでしょうか?

例えば私が借りている土地の上に1プリムのキューブを出現させたとしたら、それはリンデンラボから見ると、自らが所有するプラットフォームの一部である土地を構成するサーバーに僅かな変更が加えられたということになります。次に私がそのキューブを自分のインベントリーに格納したとすると、それはリンデンから見れば、自らが所有するプラットフォームの一部である個々のアカウントに紐つけられたサーバーの一部に僅かな変更が加えられたことになります。それだけなんです。

私が持っているのは、その加えた変更を再現するのに必要なデータですね。しかしそれは独立して存在しているのではなくて、リンデンラボの所有しているサーバーに加えられた変更という形で存在しているにすぎません。私はその情報に更に変更を加えたり、他の人にその情報を譲り渡したり、その情報へのアクセスを放棄したりすることが出来るのです。これがSLにおける「所有」の実態なのです。

また反対にSLにおける様々なアカウントや作られたアイテムがリンデンラボの所有物でないとしたらどうなるのでしょうか?プラットフォームは不可抗力でダウンしたり、内容の一部が失われることがあります。もしプラットフォームに加えられた変更を含めてそれがリンデンラボのものでないとすると、それらの情報が失われた場合にはリンデンラボはそれに対して損害を賠償する責任を負うことになります。

しかし、実質的にプラットフォームに加えられた多くの変更、1日辺り新たに何百万件も付け加えられる変更をリンデンラボが承知することは不可能です。グリッドとしては認識していても個別にそれらをすべて評価することはできないのです。だから失われたものを再現するということも、バックアップを取ることが技術的に可能であり、実際それをやっているにしても、それを義務とすることを認めるわけにはいかないのです。ある3D仮想世界を設定して、それにユーザーが変更を加えることを許すサービスを供給して対価を得ているリンデンラボとしては、どんなに変更が加わろうとも、それらを含めてプラットフォームはリンデンラボの所有物であるとの立場を崩すわけにはいかないのです。

つまり、実態面からも、論理面からも、SLのなかで作られたものの所有権はリンデンラボにあるということが、このサービスの根幹を成しているのです。そうして、この前提に立って、SL内での知的所有権の保護などの取り扱いも決まってくるのです。RLで実体的な権利として認められている知的所有権に対するリンデンラボの保護の姿勢と、しょせんユーザーがリンデンの所有物に加えた僅かな変更にすぎないものに対するものとの間には取り扱いに大きな差があるというのは、極めて当たり前のことなのです。

リンデンラボはこの辺りを実際には声を大にしていいたいのですが、それを言ったら幻滅を感じてしまうユーザーが多く出てくるだろうし、それを言って何も得がないので、なんとなく有耶無耶な感じで放置していて、その態度に対して私たちがときどき怒っているということなのですね。一々いわなくても考えれば分かるはずだし、察して欲しいなというのが本音なのではないでしょうか?

もちろんこれに対して、このような従来のRL中心の見方ではなくて、自らが提起したプラットフォームの中における知的財産権をどう位置づけるのがあるべき姿なのかという議論は出てきます。これは関係者が更に一段上の立場から、未来に向けて議論していくべき事柄で、今回は私はカバーできていないイシューなんです。

タグ :所有権

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Posted by Sophiee Winkler at 13:16│Comments(0)ビジネス
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