2011年06月14日
続「テロとの戦い」

ちょっと前に「そろそろITテロの撲滅を目指した戦いが国家により始められる。」というようなことを書いていました。その一週間後には米国政府関係者が暗に中国を念頭に置いて、「国家的規模で行われているハッキングはテロリズムそのものなので、物理力を使って報復する。」という警告を出しました。また最近ハッカーグループのアノニマスのメンバーのスペイン人3人がソニーのネットワークに侵入したかどでスペイン当局に逮捕されました。アノニマスの方はソニーのPSNのクレジットカード情報流出に関わったという嫌疑までには至っていません。
まあ、半年前に予言したなら私も相当な先見の明があるということでしょうが、あまりにも現実に近いと効果はないでしょう。
どういうことかをまとめておくと、まずテロとの戦いは本当はいつまでも続いていくものなのですが、米国としてこれ以上これにかかずらわっていても害多くして、益は少ない。ビンラディンを殺したことで一応の目処というか顔は立ったので、もっと安上がりな標的を探すことにしたのです。
ご存知のように米国のシステムは常に敵を見つけてはそれを攻撃することによって成り立っています。日本を敵にして大成功して以来、それを前提とした社会、経済になっていて、ベトナム、イラン、スーダン、アフガニスタン、イラク、中東のテロリスト等々、他にもあるのかもしれませんが、ずーっと戦い続けているのです。そして無実の外国の市民も巻き添えにして殺しています。でも日本以外はあまり成功していない。
こういうことをやっていると、最近は別に占領地から戦利品を奪うことができたり、肥沃な土地を得ることが出来たりするわけではないので、国としてはあまり儲かりません。勿論軍事産業とか石油産業は潤うわけですが、そのために主に田舎出身の若者を何千人も死なせることになります。全体の収支としてはマイナスですね。
だから財政的に苦しくなると、ある程度このような活動は抑えて、別の種類の「敵」を探すことになります。で、それがあったのです。それが独立で、あるいは中国を始めとするライバルの国家の後押しを受けているらしいハッカーの集団だというわけです。これは本当でないかもしれない。でも本当でなくてもいいのです。
今回も実際の情報テロリストはうまく立ち回ってあんまり被害を受けないかもしれません。代わりにネットワーク上の不器用なコソ泥みたいな者がとばっちりで捕まるのでしょう。ハッカーはRLのテロリストと同様に全世界に散らばっていて特定するのが難しいように思うのですが、所詮ネット上で何かやるわけですから、捕まえる方が本気ならできるでしょう。
当局が偽ソニーのサイトを作っておいて、そこに偽カード情報を貯めておき、適当に難しいガードを掛けておけば、それを突破して進入してくるのが本物のハッカーというわけです。つまりネットワーク上のおとり捜査です。
ハッカーたちは如何に痕跡を残さないで動き回るか、当局側はそれでもそれを検知できるかというような虚々実々の駆け引きが行われるのでしょう。まさに戦いでもあり、ゲームでもあるということなります。
こういうことは何年も前から起きていて、それに一部の国家が他国の経済を混乱させたり、知的財産を盗んだりする目的で参入してきたことで、「情報テロとの戦い」が幕を開けたのです。それは長年私たちの目に見えないところで行われていましたが、「旧テロとの戦い」が一段落したことで、次のテーマとして水面に浮上してきたのですね。
まず最初に行われるのは先進国において「情報テロ」を通常の犯罪とは異なる刑法犯として位置付け、加重的な刑罰を定める法整備です。これが米国をはじめとする西欧諸国で出て来るといよいよ本格的な国家によるハッカー狩りが始まることになります。
この動きに反対する国は少ないでしょう。少なくとも表面は賛成しておかないと、「テロ支援国家」になってしまうし、実際ハッカーの楽園に成りかねないからです。普通泥棒は自分の家の近くは狙わないものですが、この人たちにはそういう感覚や仁義を期待できないことは明白ですね。
中国人のハッカーが自分の行動が発覚していることを知らずに欧米に入国して逮捕されるというようなニュースが来年あたりは登場しそうです。
Posted by Sophiee Winkler at
10:00
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