2009年04月30日
予言者は如何

Secondlife HeraldにSigmund Leominster という人の記事が載っていました。仮想世界のジャーナリストなんでしょうか。
「もう一つの主要なニュース事業者がSLから撤退するというのに、運命の預言者はまだ死の床でのたうちまわるのであろうか?英国のSky NewsはSL支局を正式に閉鎖して、『新しいイマーシブな仕事のスペース』のあるSLのプラットフォームに移ることをアナウンスした。ニュースは依然としてこれらの作業スペースにストリーミングビデオの視聴に欠かせない『News Pods』を通じて配信されるだろう。」
この人は何だかドラマティックな物言いが好きみたいですね。そんなに大袈裟な話ではなくて、SLのなかで企業専用に開発された事務空間に引っ越すということです。もっともそれがどこにあるのか私たち一般住民は知らないし、アクセスはできないようになっているのでしょう。
もう一つの事業者というのは、既にReuters (ロイター通信)がSLの事務所を閉めたことに基づいています。どっちにしても、住民はSLではなくてRLからこれらのニュースサービスにアクセスできるのだから、同じ情報なら別にSLから配信してもらったりする必要はないわけです。また、SL内での出来事がRLに大きな影響を及ぼすようなことは今のところないし、SLの実働住民数もRLと比べれば段違いに少ないのだから、ビジネスとして維持していけないということでしょう。
運命の預言者というのは普通は悪いことばかり予言するっていう印象がありますが、良いことも予言するのです。ここでは「未来はSLのあるいはメタバースのものだ」という予言でしょうね。お話に出てくる幸運の女神というのも、実は運命の車輪を回していくのが仕事で、それによって私たちは繁栄と破滅の間を行ったり来りさせられるのです。これが西洋の思想です。
イマーシブというのはいつか取り上げた、操作者がより3D空間に没入する形で仮想空間を認識できるインターフェースのことだけど、上に掲げた理由によって別にイマーシブだからといっていいニュースを取材したり配信したりできるということではないと思います。まあそういうインターフェースを備えている企業グリッドの人達に臨場感あるニュースを伝えられるということでしょうけど、それを享受する購読者はSL一般よりも更に数が少ないでしょう。だからコンセプトレベル、あるいは言葉のレベルのことに過ぎないでしょうね。株価チャートをイマーシブに認識したり、新型インフルエンザウィルスをイマーシブに観察することにどれほどの意味があるのかと思います。Sigmund Leominsterのコメントは続きます。
「他のニュース事業者の撤退をやや斜に構えたスタンスで引き合いにだしながら、Sky Newsはこう述べる、『生きることと技術とは、その生がSLであったとしても、移ろいゆくものだ。SLでのトレンドは私たちの持っていたような企業の島という形から、益々別のところへと動いていくだろう。』」
「仮想世界の不幸の預言者Cassandara達は、これを『終末が近い』ことの更なる証拠としてあげつらうだろう。一方でより冷静な批評者達はSLにおけるニュースのレポートや配信というビジネスモデルはRLのそれとはかなり異なるもので、RLの類似物をSLに作って多くの金を使うことは、財政面から意味をもつことだとは必ずしも言えないとコメントするに留まるだろう。」
たった15行の記事なのに、なんか大袈裟ですね。ただこのエッセンスとして、企業が今までのSimの維持をやめ、リンデンが別に提供する企業専用グリッドにどんどん移転しているということ、そしてその実態に私たちが触れられないということはとっても気になります。ま、RLだって勝手に企業の中までは踏み込んで行けないんですから、同じようなものですが。SLは特別だ、新しいオープンな世界だって思っていたのに、企業はSLと同じように、必要な時にだけ住民や消費者に働きかけたいみたいです。これは退化というべきでしょう。
SLの中で引き篭もる住民と、引き篭もる企業。なんか中世のヨーロッパみたいになってきました。Cassandaraってギリシア神話のトロイア戦争に出てくる女性予言者ですね。不幸の予言をするんだけれども、誰にも信じてもらえないという設定でした。ここでは何かあるとすぐに「SLはもうだめだ」という人達を指しています。私もこの傾向ありますね。
Posted by Sophiee Winkler at 13:18│Comments(0)
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