2009年09月30日
学力テスト

ちょっと風邪気味で、新型インフルエンザかどうか様子をみています。でも熱も高くないし、喉にちょっと違和感があるくらいなので、多分違うのでしょう。SLにはあまりログインしていません。
ということで今日はSLを離れたお話。雑誌を見ていると、小中学生の学力テストの結果とその家庭の所得水準とが完全にリンクしていて、所得格差によって教育の機会が奪われているというようなことを「識者」と言われる人が書いていました。最近よく話題にされることですね。
でも、こういう論法はすごく大雑把で、注目を集めることを目的として書かれているだけのような気がします。こういうのはいかにも本当らしい理屈を並べるのがポイントですが、よくみるといい加減なところに気がつくのです。
はっきりと明言していないのですが、言いたい理屈はこういうことでしょう。まず、最近の教育には幼いところからお金が掛かる。だから親の所得が高くないと正規の教育以外の塾とか家庭教師、教材にお金が回らなくて、可哀相な子どもは学力を高めることができない。
このようなことが起きていることは事実でしょう。しかし、すべてがこの理屈通りかどうかはかなり疑問があります。まずロジックが一直線ですね。考えられる様々な場合をすっ飛ばして、一つに絞って、これしかないというような組立てになっています。
数学や統計学といった純粋なロジック系のものはこれでいいのですが、人間や社会が絡んでくると実際にはもっと複雑になります。例えばこの結果を聞いて、中国の人は次のように思うかもしれません。「日本は中国と同じコネ社会、学歴社会なので、学力テストの答えを予め教師にお金を払って教えてもらっている。だから親の所得が高いほど子供の学力テストの点数は高くなるのだ。」と。そんな馬鹿なというところですが、理屈としては通っています。
第二のポイントは「相関」を表現しているにすぎないのに、あたかも「因果関係」があるかのようなスリ換えが行なわれていることです。学力テストの結果が示すものは正しくは「学力テストの点数の高低と親の所得との間には極めて強い正の相関がある。」ということだけです。何々だから、こうなるといった理屈を説明しているわけではないのです。従って、お金がないから教育が不十分になるという理屈以外にも、学力が低いからお金がないという逆の方向の因果関係だって成立する可能性はあるのです。
子供の学力が低いからお金がないというのは奇妙な響きですが、実際には次のように言い換えると現実味を帯びてきます。例えば「学力の高い親は結果として高所得の職業につき、やはり学力が高い配偶者を持ち、遺伝により学力の高い子どもをつくり、両親が子供の学力に強い関心を持つ結果、子どもはその期待に応えようとする。」といった具合です。
更にものごとは歴史や世の中の変化という時間軸でも見たり、他の地域、国家との比較で見ていくことも必要です。昔の日本はどうだったのでしょうか?みんなが貧しく、職につくことに必死だったころ、兄弟が5人も10人もいるのが普通だったころはそんなことは当たり前だったはずです。子供は幼いころから働かねばならず、学校に通えない子も一杯いたのです。発展途上国でも事情は同じですね。
このように考えると最初に掲げた「識者」の主張はプリミティブでむしろそこから進んで探求することでもっと面白いテーマに出会うことが出来るように思います。
ま、個人的には塾に行かないでも、遊んでいても東大に現役で入ってしまう友達は何人もいましたし、誰に習おうが、どこに通おうが基本的な馬鹿さ加減は変化しないと思います。それよりも未だに誰かの考えた必ず答えのある問題に短時間で解答するという受験技術を人間の評価の中心に置いている教育界の方がよっぽど問題でしょう。人間はアウトプットで評価されるべきなのに、インプットを再現して見せられる能力で評価しようとしているのですからね。
教育者や教育界というのは依然として建前で動いているので、以上に述べたようなことは「思っていても言ってはいけないこと」なんだそうです。本気で調べるのであれば、親の学歴や、知能もデータとして集める必要があるので、このテーマは永遠に謎のままなのでしょう。
こんなSLに関係のない話なんて皆さん興味ないのでしょうか?
Posted by Sophiee Winkler at 13:03│Comments(0)
│生活
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