2008年11月29日
TROの概要
前々回TROの原文を掲げて放り出してしまいましたが、あまりに不親切なので要点のみ書いておきます。Temporary Restraining Order by Consentというのですが、「同意に基づく暫定禁止命令」とでも訳すのでしょうか?裁判所による判断が下る前にMinskyのいう商標権侵害行為がSLの中であった場合の処理の仕方について、原告と被告双方の合意が命令という形で記載されているものです。
手続き的な面でかなり細かく規定されています。MinskyはE-mailでリンデンラボに侵害の事実を通知しますが、その際侵害の内容だけでなく侵害行為の主体であるアバターの名前、侵害行為の行われている場所を知らせなければならないだけでなく、SL画面のショットも添えなければなりません。要するに実際にリンデンラボが侵害行為を特定して是正措置を講じることができる程度に具体的な内容を通知しなければならないのです。
通知したからといってリンデンラボがそのまま行動するわけではありません。TROには侵害行為の判断基準が載っています。それは“SLART”という文字が同じ大きさの大文字で同じフォントで同じ色で表示されていなくてはならないというものです。英文でいうと、“as one word with all letters depicted in a uniform size, font and color”とあります。だから“SL ART”や“Slart”や“SLART”は侵害には当たらないと解釈できますが、この解釈を巡って後々また紛糾する場面が出てきます。米国人同士で揉めるところなので、私が解釈しても意味ないのかもしれない。
ということで、リンデンラボは以上の基準に照らして別に侵害行為ではないと判断すれば、Minskyの要求を拒否できるわけです。この場合Minskyは再び裁判所に救済を求めることになります。その場合話を持っていく先も決められていて、このNY北部地裁ではなくて米国治安判事のDavid R.Homerに訴えることになっています。治安判事裁判所って交通違反なんかの軽微な民事、刑事、行政の揉め事を解決する場ですね。でも本当に具体的に規定されています。
で、今後も揉めることが考えられるのでTROにはお互いの主張する事実や取り交わした通知はちゃんと記録しておくように求めています。親切ですが、逆に「分かりません」とか「失くしました」という言い訳は通用させないという意味でもあります。それぞれの行動についてはすべて「何々があってから何日以内に」と時間的な歯止めが掛かっています。
Minskyは侵害行為を行ったアバター(アカウント)のRLにおける正体をリンデンが開示するよう裁判所に求めていましたが、TROはそれを認めず、個別にMinskyが主張する侵害行為ごとに、やはりHomer判事が判断することになっています。確かにその方が合理的ですね。
というのは、双方ともインチキなアカウントをつくって見せかけの侵害行為を演出することができるからです。Minskyにすれば、このように侵害行為は頻発しているという実績を見せるという意味がありますし、リンデンラボはギリギリで抵触しないような表示をそこらじゅうに現出させて、Minsky側を疲れさせるということもできます。当事者に任せておけば止め処ない泥仕合になっていきますが、裁判所を絡めておけばあまりに悪どいことはできないからです。なんて私も余計なことを考えますね。性格に問題あります、我ながら。
このように対立する双方は一旦は手続き的な面で合意をしたものの、今度はその執行を巡って虚々実々の駆け引きを繰り広げていくことになります。実際この後侵害行為が見つかってそれでまた対立することになっていくのです。
余談ですが、私は今回米国の裁判所の命令を読んで、変なところに感動してしまいました。一つはTROの最後に「書記官はこの命令の写しを全ての当事者に渡すこと」とあるんですが、英文では“and it is further ORDERED, that the Clerk serve a copy of this Order on all parties”となっています。Clerkは単数なのに動詞にはsが付いていません。これは何故でしょう?そうなんです、「要求、提案、命令を表す動詞に続くthat節では原形動詞を使用する」って英文法で習いましたね。実際にそうなんだ~って思ったわけ。でも、こんな時にしか役に立たないなんて……。
それから文章は“IT IS SO ORDERED”(斯くの通り命ぜられた)と結んであります。おォ~本当に命令なんだ~って感動したわけです。